島根
【由良比女神社】隠岐西ノ島のイカ寄せ伝説が残る神社
島根半島の北、日本海に浮かぶ火山活動によってできた4つの有人島とその他約180もの島々で構成されている隠岐諸島(おきしょとう)。その4つしかない有人島には100以上の神社があり、出雲大社と同じ神社の格式である明神大社に属する由緒ある神社は隠岐四大社として知られています。島前3島のうちの1つ「西ノ島」には、イカ寄せ伝説が残る「由良比女神社(ゆらひめじんじゃ)」があります。今回は伝説にまつわる装飾も見ることができる「由良比女神社」の見どころや行き方についてご紹介します。
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撮影:りとふる編集部
「由良比女神社」とイカ寄せ伝説
西ノ島の玄関口である別府港(べっぷこう)から車で約10分の場所にある「由良比女神社(ゆらひめじんじゃ)」。隠岐四大社と称される隠岐諸島にある明神大社の1つで、平安末期には隠岐国一宮に定められています。
ちなみに、一宮とはその地域の中で最も社格が高いとされる神社のことで、つまり隠岐国の中で1番格式が高い神社ということです。特に由良比女神社は西ノ島の一宮であり、島前3島の一宮でもあると言われるほど人々から信仰されています。また、明神大社とは927年にまとめられた延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)という当時の神社の格付けリストのようなものに記された神社の格式です。明神大社は島根県内に数ある神社の中でも現在の出雲大社を含む6社しか選ばれていないほどの高い格式で、当時からその由緒ある歴史の深さと格式高さを認められていたことが分かります。
神へのお詫び!?イカ寄せの浜の伝説
別府港から車で向かうと山の手前に入り江が見えてきます。こちらが由良比女神社の正面にある「イカ寄せの浜」です。由良比女神社の主祭神ユラヒメノミコト(由良比女命)が芋桶(おぼけ)に乗って海を渡っていた時に、海に浸した手をイカが嚙みついたそうです。そのお詫びとして神社の目の前の浜には毎年大量のイカの群れが押し寄せるようになったと言われています。実際に、昭和前半頃までは毎年大量のイカの群れがこの浜に押し寄せていたというから驚きです。
最近では大量のイカが押し寄せられることはほとんどないそうですが、数年前にも大量のイカが浅瀬に打ち上げられるほど押し寄せたことがあったそうです。イカ寄せの浜の伝説には諸説あるので、ぜひ現地で尋ねてみてくださいね。
神社にも伝説が記された看板が建てられています。「イカ寄せの浜」のオブジェだけではなく、駐車場の奥にある由良比女神社を包むようにそびえる山にも大きなイカの飾りが付けられています。木々が茂っているので写真だと分かりづらいですが、かなり巨大なイカが飾られていたので訪れた際はぜひ探してみてくださいね。
イカ姫と称される由良比女神社
鳥居をくぐると左側に手水舎、右側に土俵が造られています。拝殿まで真っすぐに延びる参道は美しく、目の前に海があるのが不思議なほど周囲の木々に囲まれ緑に包まれている印象です。
きらびやかさはないものの、木造の随神門が静かに存在感を放ち、思わずシャッターを切りたくなる佇まいでした。
随神門の奥にも鳥居があり、階段を上がって拝殿へと向かいます。ちなみに、1度境内の外に出て道路沿いから本殿に向かって坂道を上がっていくと、道路側から拝殿近くに直接行くことができる鳥居があります。バリアフリーとまでは言えませんが、道路側からだと段差が少ないので階段が苦手な方は外から回って行くと良いかもしれません。
立派なしめ縄が付けられた拝殿は、海の目の前に建っていることを忘れてしまいそうになるほど緑に囲まれています。拝殿とその奥にある本殿の上は、明るく照らされている光景が印象的でした。
しめ縄の上部には龍の彫刻が施されています。よく見ると龍に翼が付いているようにも見え、飛竜ではないかとも言われているそうです。龍も狛犬のように阿吽の表情にされているなど、細部までとても細かく彫られています。
別名「イカ姫」とも称される由良比女神社ですが、拝殿の扉上部にはたくさんのイカが波に揺られているような彫刻を見ることができました。ちなみに、ユラヒメノミコトはスセリヒメノミコト(須世理比売命)の別名で、本殿は隠岐造ではなく大社造り変態です。
本殿の横、道路と反対の山側には境内社も鎮座し、それぞれ異なる神社が並んでいます。また、本殿の側面にはイカ寄せの浜にまつわる写真資料も展示されているので、ぜひ参拝後は横へ回って見てみてください。
拝殿や鳥居のすぐそばには石灯籠が並んでいます。これらの灯籠にも細部まで彫刻が施されていました。魚やイカなど、灯籠にもイカ寄せの浜をモチーフにしたような彫刻が見られます。神社の様々なところに装飾が散りばめられているので、それを探してみるのもおもしろいですよ。
日本橋「しまね市町村(まち)ナビフェア」では、「しまねSuper大使・吉田くん」や隠岐西ノ島町の「活イカ活っちゃん」も一緒にゃったにゃ°˖✧◝(*’ω’*)◜✧˖°明日も行くから、みんにゃ遊びに来てにゃ〜♪ pic.twitter.com/h3MwAQixfk
— しまねっこ【公式】 (@shimanekko_) September 5, 2017
ちなみに、イカは今でも西ノ島町の特産品として身近な存在です。イカをモチーフにした「活イカ活っちゃん(かついかかっちゃん)」という西ノ島町のPRキャラクターもいます。別府港ターミナルの外観に飾られているので、興味がある方は探してみてくださいね。イカ寄せの浜に残る伝説と地域の産業や生活が実際に結び付いていることが分かるのも、島旅でその土地を知るおもしろさの1つです。
御朱印をいただくポイント
隠岐国一宮でもある由良比女神社の御朱印をいただきたいという方も多いのではないでしょうか。現在、由良比女神社の境内では御朱印の記帳をしていません。別府港ターミナル内にある西ノ島町観光協会の窓口で御朱印をいただくことができるので、由良比女神社に参拝後、島を出る前に観光協会に立ち寄ると良いでしょう。ただし、観光協会では観光客の窓口対応などもあるため御朱印をいただくまでに時間がかかる場合もあります。時間に余裕を持って訪れましょう。
由良比女神社の大祭
イカをすくい上げる人々のレトロな看板がかわいらしい「イカ寄せの浜」では、2年に1度、7月末の土日に「由良比女神社の大祭」が開催されます。神輿を漁船に乗せて、船の上で神楽が奉納されます。その後、神船が島前の内海を一巡する間に打ち上げ花火も上がる西ノ島最大のお祭りです。
数年前に隠岐行ったときに、たまたまお祭りやってた時の画像発掘。(古い携帯なので画質はお察し) 地元の人が2年に一度とか言ってたので、由良比女神社大祭っぽい。船を2台繋げて船上で神楽でした。 pic.twitter.com/ImQOZw4Lsm
— nor@美音 (@otono_mion) June 11, 2017
由良比女神社にある土俵では相撲が奉納され、船上神楽はわずか4畳ほどのスペースで舞い踊るそうです。島前の神楽はまだ復元を続けているなど、すべてが明らかになっていないものもあるそうですが、由良比女神社の大祭は地元の方から観光客まで集まって大いに賑わいます。
由良比女神社への行き方
別府港から車で向かう場合は、由良比女神社の道路標識と同時に左側に鳥居が見えます。そのまま坂を下りて2つ目の鳥居を通り過ぎて海の手前の道に入るように左折すると、すぐ左側に駐車スペースが設けられています。写真のトイレの裏側が駐車スペースです。1つ目の鳥居が見えてから駐車場まではすぐ近くなので、通り過ぎないように注意しながら進んでください。
また、バス停「由良比女神社」もあるので、別府港から町営バスで行くこともできます。駐車スペース側に進むと木に飾られた大きなイカの飾りや海に建つイカ寄せ浜の鳥居などを見ることができるので、バスで訪れた方もバスの待合スペースのすぐ裏の駐車スペースまで歩いてみてくださいね。
別府港~由良比女神社…車で約10分、町営バスで約25分、E-BIKE(電動アシスト自転車)で約25分
電動アシスト自転車「E-BIKE」とは?
隠岐諸島の4つの有人島では、E-BIKEと呼ばれる電動アシスト自転車を貸し出しています。西ノ島では別府港ターミナル内にある西ノ島町観光協会でレンタルすることができます。ママチャリタイプの電動アシスト自転車と、スポーツタイプのE-BIKEでは料金が異なるのでお好きな方を選択してください。また、借りた自転車は島をまたいで利用することも可能です。利用には事前予約が必要で、台数に限りがあるので早めに予約をするのがおすすめです。
詳細は西ノ島町観光協会ホームページをご確認ください。
最後に
出雲大社と同じ神社の格式である明神大社が島根県内に6つあるうち、なんと4つが隠岐諸島にあり“神々の島”としても知られています。その歴史は神社仏閣に留まらず、古代から1つの国府・隠岐国としてそれぞれの国を治める国司が置かれるなど日本本土から見ても重要な役割と認識されていました。今も地域に残る習慣や文化がそれぞれの神社に残る伝説や歴史と繋がる部分も多くあります。隠岐諸島を周遊しながらそういった部分にも目を向けて見てみると、より興味が深まるかもしれません。