島根
【宇受賀命神社】田んぼに囲まれて佇む隠岐島前最大の隠岐造の神社
2021年に後鳥羽院遷幸800年を迎えるなど、歴史と伝統が残る隠岐諸島の海士町「中ノ島(なかのしま)」。田んぼと山に囲まれた落ち着いた佇まいが印象的な「宇受賀命神社(うづかみことじんじゃ)」は、出雲大社と同じ明神大社に位置付けられている格式高い神社です。秋には黄金に輝く稲穂に囲まれた参道を通って参拝することができます。今回は「宇受賀命神社」の見どころや行き方についてご紹介します。
#島根県 離島 #隠岐 観光 #中ノ島 観光 #観光スポット
撮影:りとふる編集部
海士町の明神大社「宇受賀命神社」
島根県隠岐諸島のうち、島前にある海士町(あまちょう)の中ノ島には主祭神ウツカミコトが祀られている「宇受賀命神社(うづかみことじんじゃ)」があります。稲穂を付けた田んぼの奥にあり、山に囲まれるようにこぢんまりと佇んでいます。道沿いにある大きな石の鳥居が目印で、田んぼの畦道部分が参道として整えられています。両脇に黄色く揺れる稲穂を眺めながら参道を進むと、もう1つの鳥居が迎えてくれます。鳥居のすぐ裏の右手に手水舎があります。
創建について、平安時代である842年より前に創建されたということまでしか詳細が分かっていませんが、927年にまとめられた延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)という当時の神社の格付けリストのようなものに記載され、現在の出雲大社と同じ最高位の「明神大社」として位置付けられていることから、当時からすでにその格式の高さを認められていた由緒正しき1000年以上の歴史がある神社だということが分かります。
拝殿の背後、さらに山の斜面の上に本殿が造られています。高台に位置する本殿は、隠岐諸島ならではの隠岐造というめずらしい建築様式です。宇受賀命神社は火災のため大正6年(1917年)に再建されていますが、島前3島の中で最も大きな隠岐造の本殿です。
大漁祈願の「あご石神事」
今は周囲を山や田畑に囲まれている宇受賀命神社ですが、およそ900年頃には島前湾の海の入り口を見下す場所にあったと言われ、大漁を祈願する「あご石神事」が今も残されるなど海との繋がりを感じさせられます。あごとは飛魚のことで、神事にあごを使うのは隠岐諸島の中でもめずらしいそうです。
あご(飛魚)に見立てた小さな石を集めて12月31日の大晦日に奉納し、1月1日に「大漁(だいりょー)」と言いながら石を撒くことで大漁と五穀豊穣を願うこの地域独自のお祭りがあります。口頭で伝承され続け、町指定の無形民俗文化財に指定されています。現在は宇受賀命神社の目の前に参道を挟むように田んぼが広がり、夏には稲穂の緑の絨毯と青い空、秋にはより一層美しく黄金に輝く田んぼを眺めることができます。
隠岐を守る3つの神社
奈伎良比賣神社。海士町豊田地区に鎮座。
式内小社、旧村社。
宇受賀命神社と、比奈麻治比売命神社の祭神の御子神を祀ってます。御朱印はありません。 pic.twitter.com/saiyAWZcXY— 伊穂明 (@an_ioaki) November 22, 2021
かつて宇受賀命神社の主祭神ウツカミコトは海を挟んで隣にある西ノ島の比奈麻治比賣命神社(ひなまじひめみことじんじゃ)の主祭神ヒナマジヒメミコトの美しさに恋をし、同じく求婚する西ノ島の大山神社の主祭神との力比べに勝ち、ヒナマジヒメと結ばれたという伝説が残されています。そのヒナマジヒメとの間に御子神の柳井姫(ヤナイヒメ)を授かり、御子神は中ノ島にある奈伎良比賣神社(なぎらひめじんじゃ)の主祭神になったと言い伝えられています。
明屋海岸(あきやかいがん)
屏風岩
別名ハート岩😄
2019年10月に岩が崩れて
ハートブレイクになったけど
今は無事❤️に見えます😍
遊歩道の奥まで行かないと
❤️に見れません
遊歩道は所々荒れてます😅 pic.twitter.com/4PFvCX7F9C— mi (@mi81672051) October 20, 2021
出産後、日常に戻ることを「産屋が明ける」と言いますが、ヒナマジヒメがヤナイヒメを出産したのが「明屋海岸(あきやかいがん)」のびょうぶ岩だと言われています。ハート型の穴が開いていて、今も縁結びや安産祈願のスポットとして有名です。
また、国境離島である隠岐諸島。地図を見ると西ノ島の比奈麻治比賣命神社と中ノ島の宇受賀命神社、奈伎良比賣神社の3つが島前の湾の入り口を塞ぐように横一直線上に並んでいるのが分かります。このようにして大陸からの侵略から神の力で守っていたと考えられ、隠岐の人々だけではなく為政者からも崇拝されたのではないかと言われているそうです。島前3島を巡りながらそれぞれの場所の繋がりを知ると、より一層興味が深まるのではないでしょうか。
隠岐諸島と神社について
島根半島沖に浮かぶ隠岐(おき)諸島は、4つの有人島と約180もの無人島の島々からなります。島後水道を境に京から見て奥に位置する隠岐の島町を島後(どうご)、手前に位置する島々を島前(どうぜん)と呼び、中ノ島、西ノ島、知夫里島の3つの有人島とその他の島々が含まれます。現存する日本最古の歴史書とされる古事記の国生み神話の中で、淡路島、四国に次いで「隠岐国」は3番目に生まれた島として隠伎之三子島(おきのみつごしま)と記載されているとても歴史深い島です。島根県の出雲大社など全国の神社からヒントを得て、隠岐でしか見ることのできない隠岐造と言われる建築様式で建てられた神社や隠岐独自の神を祀るなど、隠岐ならではの文化が今でも残されています。
隠岐ジオパーク推進機構では、隠岐諸島の神社をまとめた『隠岐島前・島後神社MAP』を作成しています。隠岐諸島の各港にある観光協会で配布されているので、興味がある方はぜひ手に取ってみてくださいね。
宇受賀命神社への行き方
海士町の中ノ島にある「宇受賀命神社」は、島の玄関口である菱浦港から北東へ約20分の場所にあります。海沿いの道を通ると、太郎・次郎・三郎と呼ばれる3つの奇岩が並ぶ「三郎岩」を見ることができるのでおすすめです。また、神社には駐車場がないので道路の端に寄せたり、近くの宮の原公園の駐車場に停めるなど、迷惑がかからないように配慮をお願いします。
菱浦港~宇受賀命神社…車で約20分
中ノ島への行き方
島前の中ノ島へ行くには、島根県本土の七類港(しちるいこう)または鳥取県の境港(さかいこう)から隠岐汽船株式会社のフェリーまたは高速船で渡ることができます。フェリーはおき・くにが・しらしまの3種類、高速船は超高速船レインボージェットが運航しています。また、島根県の松江駅、鳥取県の米子駅から七類港と境港のどちらにもフェリー接続バスが運行しているので、乗船する船に合わせてどちらの港にも行くことができます。時期によって時間や便数が変わるので、事前に確認しておきましょう。
最後に
ガイドブックなどではあまり語られていない海士町の中ノ島にある「宇受賀命神社」についてご紹介しました。一見あまり知られていない神社でありながらも、周辺環境も含めて見た目も美しく、歴史や伝説が今も残され神事も続けられているとても興味深いスポットです。隠岐諸島を周遊することで島々の関係や繋がりを知ったときの喜びや興味が増し、それぞれの地域の伝説や言い伝えが繋がっていくおもしろさもありました。ぜひ隠岐諸島を訪れる際には周遊をして、それぞれの繋がりなども感じてみてはいかがでしょうか。