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長崎

【福江城跡(石田城跡)と五島氏庭園・心字が池】国内最後に造られた城跡

2023.04.05

【福江城跡(石田城跡)と五島氏庭園・心字が池】国内最後に造られた城跡

長崎県五島列島「福江島(ふくえじま)」の福江港から市街地周辺を歩いていると、大きな石垣が目に入ってきます。こちらは江戸時代最後に完成した城郭「福江城(石田城)」の城跡で、石垣や石橋などが今も現存しています。また、現在は本丸跡に県立五島高校、北の丸跡に五島観光歴史資料館や図書館などがあり、地元の方の生活の場としても根付いています。今回は『続日本100名城』にも選ばれている「福江城跡(石田城跡)」と二の丸跡に造られた国指定名勝「五島氏庭園・心字が池(しんじがいけ)」の見どころや行き方についてご紹介します。

#長崎県 離島 #福江島 観光 #観光スポット
撮影:りとふる編集部



わずか9年で解体された「福江城(石田城)」

福江島_福江城跡(石田城跡)_230331

福江島の市街地中心部を歩いていると、大きな石垣が囲う城のような建物が目に入ります。こちらは福江城(石田城)の跡地で、城のように見える建物は五島観光歴史資料館や文化会館、図書館など後から建てられたものです。

福江島_福江城跡(石田城跡)②_230331

江戸時代末期の1863年、福江城(石田城)は日本で最後に築城されましたが、わずか9年で明治政府によって解体され、石垣や石橋、裏門にあたる蹴出門(けだしもん)などの一部のみが現存しています。

福江島_福江城跡(石田城跡)_230331

幕末、海上防衛や異国船の来訪に備えるために築城を願い出た経緯があり、砲台も設けられるなど国境離島ならではの城郭でした。今は埋め立てられて分からなくなっていますが、三方向が海に面した当時日本唯一の海城(うみしろ)で、石田の浜に建てられた名残りで「石田城」とも呼ばれています。

福江島_五島氏庭園・心字が池④_230331

現在では本丸跡に県立五島高校が建てられ、登下校時には高校生が次々と門をくぐるというめずらしい光景を見られます。城さながらの五島観光歴史資料館が建てられたりと、福江城跡(石田城跡)が今でも生活に身近な存在であることが分かります。

繊細な装飾が残る「五島氏庭園・心字が池」

福江島_五島氏庭園・心字が池③_230331

福江城(石田城)の一角には、五島家第30代藩主 盛成(もりあきら)が京都の寺などを造った僧侶である金正に造らせた隠殿としての邸宅と庭園があります。金閣寺の丸池を模倣した林泉回遊式と呼ばれる日本庭園で、国指定名勝に指定されています。中央の大きな池は「心」の字を模って造ったとされ、「心字が池(しんじがいけ)」と名付けられました。まずは、心字が池を中心に庭園をぐるっと1周しながら景色を楽しみました。

福江島_五島氏庭園・心字が池・井戸_230331

福江島の中心街から1歩庭園に入るだけで木々や隠殿で視界を遮られ、別世界に来たかのような感覚になります。実際に生活をしていたことを実感させる茶事に使われた井戸なども残されています。

福江島_五島氏庭園・心字が池・楠木_230331

見上げるほど巨大な楠の木は樹齢840年を超えると言われ、福江城(石田城)が造られるよりもずっと前からこの地を見守り続けている木として大切にされています。庭園造りにはこの木が活かされたのではないかと言われています。五島家、そして同じ城跡内にある「城山神社」の御神木として奉られているそうです。

福江島_五島氏庭園・心字が池_230331

他にも、オオタニワタリやソテツなどの亜熱帯植物や中国から移植された金明竹(きんめいちく)などの様々な植物が植えられています。福江島のシンボルである鬼岳の溶岩が使われているのもこの庭園の特徴です。

福江島_五島氏庭園・心字が池・五重の塔_230331

また、池の周りには石灯籠がいくつか飾られています。中でも存在を放つ五重の石塔は、文禄の役での功績を記念して本丸から移動させたそうです。ちょうど隠殿の正面、室内からも戸を開けると見える位置に建てられています。

福江島_五島氏庭園・心字が池②_230331

当時の藩主 盛成が亀をとても好んでいたことから、池の中に浮かべられた中島など様々な場所には亀に似た石が飾られています。36もの亀がいると言われているので、いくつ見つけられるか探してみてくださいね。

福江島_五島氏庭園・心字が池金正の句_230331

庭園を1周したら、隠殿内部を見学します。靴を脱いで玄関の間に上がると、心字が池庭園が完成した時に生まれた金正の句を書した屏風が出迎えてくれます。隠殿内部は、案内人の方に説明をしてもらいながら見学をします。

福江島_五島氏庭園・心字が池・亀の間_230331

襖を開くと奥に続く部屋を真っすぐ見通すことができました。亀の間では、欄間や釘隠など部屋の随所に盛成が好んだ亀の装飾が施されています。

福江島_五島氏庭園・心字が池・亀の間②_230331

また、当時の江戸では雪華模様が流行っていたそうで、その人気を取り入れた雪の結晶の模様があしらわれた白い壁紙が貼られています。

福江島_五島氏庭園・心字が池隠殿_211213

こちらの壁紙は和紙を藍染めして作られているそうです。このように客間には亀、竹、梅などの縁起が良いものがあしらわれています。亀の間の隣にある梅の間は壁の唐紙模様、釘隠、欄間の彫刻など多岐にわたり「ねぢ梅」と呼ばれる梅の紋が施されています。現代にも通じる華やかさやかわいらしさがあります。

福江島_五島氏庭園・心字が池・梅の間_230331

室内からも心字が池を眺められるように造られ、今も昔も美しい庭園の景色が人々を楽しませています。秋には月見を嗜むこともあるそうです。また、障子の組子もおしゃれな見た目の美しい様々な模様が施されていますが、中には魔除けの意味が込められているものもあるそうです。

福江島_五島氏庭園・心字が池③_230331

中庭を見渡せる窓もあり、随所におしゃれな工夫がされています。築150年以上が経ち、劣化も弛緩したため修復工事を行い6年かけて2016年に完成、2022年12月~2023年4月上旬まで施設改修を行うなど、今後も長きにわたってこの美しい施設を見られるように手入れが続けられていくことでしょう。



「福江城跡(石田城跡)」と「五島氏庭園・心字が池」への行き方

福江島_福江港ターミナル_230331

福江島の繁華街からほど近くの「福江城跡(石田城跡)」は、福江港ターミナルや宿泊施設、飲食店などが集まる中心地に位置します。福江港ターミナルから右折して直進し、ガソリンスタンドを目印に左折、国道384号沿いに進むと福江城跡(石田城跡)の石垣が現れます。または、福江港ターミナルから左側のスーパーが並ぶ方向へ進み、直進していくと福江城(石田城)を示す看板が現れます。看板を目印に右折すると到着します。

福江港ターミナル~福江城跡…徒歩約10分

福江城跡(石田城跡)と五島氏庭園・心字が池

長崎県五島市池田町1-7

9:00~17:00(2月・3月・12月は9:00~16:30)

休園日:火曜日、水曜日、8月9日、中秋の日、12月27日~1月31日

※その他臨時休園あり

入園料:大人800円、小人(10歳~17歳)400円 ※大人同伴の場合9歳以下の方は無料

無料駐車場あり(普通車8台可)

福江城(石田城)五島氏庭園隠殿屋敷・心字が池(五島市観光サイト)

 

最後に

美しい庭園と隠殿の両方を楽しむことができる「福江城(石田城)」と「五島氏庭園・心字が池」。心字が池は水深がかなり深く、124万リットルもの水が入り城郭内の水源にできるように設計されているそうです。美しい見た目だけではなく実用性も兼ね備えられ、説明を聞くことでより興味が深まります。穏やかな時間が流れて気軽に非日常感を楽しみつつ、風が通り抜ける感覚など写真では伝わらない良さもあるので、ぜひ1度訪れてみてはいかがでしょうか。

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