島根
【摩天崖】隠岐諸島のダイナミックな絶景が広がる断崖絶壁
国境離島でもある島根県沖に浮かぶ隠岐諸島。そのうち島前の「西ノ島」にある「摩天崖(まてんがい)」は、名前のインパクトさながらの切り立つ崖が連なり、隠岐を訪れたら絶対に見たい景色です。西ノ島には隠岐諸島5大スポットの1つとも言われる国賀海岸があり、摩天崖はその一部に含まれます。今回は断崖絶壁の絶景スポット「摩天崖」の見どころや行き方についてご紹介します。
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アイキャッチ画像提供:PIXTA
撮影:りとふる編集部
Contents
隠岐諸島・西ノ島について
島根半島の北、日本海に浮かぶ火山活動によってできた隠岐諸島(おきしょとう)。島前(どうぜん)と呼ばれる西ノ島・中ノ島・知夫里島(ちぶりじま)と、島後(どうご)と呼ばれる4つの有人島と、その他約180もの島々で構成されています。島前と島後はそれぞれ別の火山噴火によって造られ、火山の溶岩や日本海側の強い季節風や荒波、海面の低下や上昇など様々な影響を受けて今の形になりました。
国賀海岸とは
このような独自の地形を育んだ隠岐諸島の中でも西ノ島は、断崖絶壁や奇岩などのダイナミックな景観が豊富で、隠岐を代表する景勝地も多く見どころ満載の離島です。
西ノ島の中央西部にある国賀海岸(くにがかいがん)は、高さ250m級の断崖が約13kmも続き、摩天崖(まてんがい)や海の波風による浸食を受けて断崖にできた海食洞(かいしょくどう)と呼ばれる洞窟、天上界(てんじょうかい)と呼ばれる奇岩群、国賀浜などの自然の繊細な造形美など、バラエティ豊かな見どころが多く集まるエリアです。「隠岐国賀海岸」として国の名勝や国の天然記念物にも指定されています。
日本有数の断崖絶壁を誇る「摩天崖」
海抜257mを誇る「摩天崖」は、隠岐諸島を代表する景勝地の1つです。海食崖(かいしょくがい)と呼ばれる海の波や風の影響で削り取られてできた崖の中で日本有数の高さを誇ります。地上から見ても海から見ても分かる垂直に反り立つ断崖絶壁が連なり、思わず息を呑むほどの光景です。
島根県西ノ島町 摩天崖に到着。
なんだこの大絶景は!
ここは本当に日本か!?🤯 pic.twitter.com/8T01d8M6UN— アスパラッキー (@asuparider) May 3, 2022
晴れた日には断崖絶壁の上部に広がる牧草地からずっと遠く水平線まで見渡すことができる摩天崖は、観光パンフレットなどでも見かけるような青々とした雄大な景色が広がっています。今回訪れた際は、あいにくの曇り空でした。そのため、想像していたような景色とは異なりましたが、それもまた自然が造り出す景観です。今回は曇りの日の摩天崖についてもご紹介します。
まずは、摩天崖の駐車場まで車で山道を登って行きます。摩天崖とは駐車場から崖に向かって広がる部分一帯を指すそうで、ゲートを通るとすぐに牧草地が広がります。寝転がりたくなるほどの牧草地が広がりますが、フンが落ちているだけではなくダニに嚙まれることがあるので、そのまま座ったり寝転んだりはしないようにしましょう。
晴れているとゲートを越えてすぐ目の前の牧草地が青々しく、青空とのコントラストがきれいなのですが、今回は濃い霧がかかり、強い風で霧が流れていく様子が見えました。なんだか雲の中を歩いているような感覚でしたよ。
牧草地が広がるので、辺りには馬や牛がのんびりと座ったり草を食べたりしながら過ごしています。すぐ近くに崖があるのを忘れてしまうほど穏やかな雰囲気が漂っていましたが、摩天崖の急傾斜を馬や牛たちは自由に行き来するというから驚きです。ちなみに、馬も牛もとても穏やかに見えますが、近付き過ぎると驚いたり怒ったりして襲ってくることもあるそうです。子育て中の場合は敏感になっているそうなので、近くに子牛や子馬がいる場合は特に注意をしてほど良い距離を保ちながら写真を撮らせてもらいましょう。
駐車場から展望所までは約200mなので、ゆっくりと景色を楽しみながらでもすぐに着きます。途中に馬や牛のフンがたくさん落ちているので、踏まないように気を付けて進んでくださいね。
こちらが標高257mの摩天崖にある展望スポットです。案内板が立てられているので展望所と言われていますが、駐車場から展望スポットまでの間も眼下に広がる海や連なる断崖、牧草地と馬や牛たちなどダイナミックな景色をたくさん楽しむことができます。こちらの写真だと雲の中で見えませんが、この先は断崖絶壁で紺碧の海が広がっています。日本海の荒波や強い風によって浸食され続け、このような断崖絶壁が造り出されました。
晴れていると連なる断崖絶壁と表面に茂った緑の絨毯、濃いブルーが印象的な海を一望できますが、このように霧が濃いのも摩天崖の地形に関係があります。摩天崖にぶつかる湿った空気が垂直な崖を上がり、崖の上部では霧や雲になります。そのため、国賀海岸から見ると上部にだけ霧がかかっているように見えることもよくあるそうです。
案内板のすぐ脇から急斜面になり、足を滑らせたらそのまま転がりそうなほどの角度があるので、まさに断崖絶壁という言葉を体感することができました。また、下から吹き上がってくる風も感じられました。
島根県隠岐郡西ノ島町の摩天崖
日本とは到底思えない壮大な景色に圧倒されます✨
日本全国の数々の絶景スポットを訪れてますが、ココ摩天崖はトップクラスに感動した場所の一つです#tokyocameraclub #nikon pic.twitter.com/iEe2844sJT— Koki Ueda (@fuehrsn) February 24, 2022
荒々しい雰囲気が漂う摩天崖ですが、西海岸沿いに位置するため夕日スポットとしても有名です。ただし、灯りがないので日没後は危険のないようにライトなどの準備をして訪れてくださいね。
歩いた人だけが見られる、もう1つの絶景
摩天崖から国賀浜までの約2.3kmの道のりを歩くことができる「摩天崖遊歩道」は、斜面を縫うように道が整備されています。海岸沿いまで下りることができるので、その高低差は約250mにもなります。陸地で摩天崖を上から下まで眺めることができるのは、遊歩道を歩いた人だけの特権とも言えるでしょう。遊歩道を下りると国賀浜付近に着き、摩天崖を造り出した浸食作用によってできた通天橋(つうてんきょう)や天上界と称される奇岩群も見ることができます。
下りだけであれば約1時間強の道のりで、スニーカーなどの歩きやすい靴であれば特別な装備などはなくても歩くことができます。国賀海岸展望台駐車場に車を停めてタクシーで摩天崖に移動をするか、摩天崖までタクシーで移動をして国賀浜に着いてから再度タクシーを呼ぶなど、摩天崖に戻らなくて良いスケジュールを組むのも良いでしょう。観光タクシーや観光バスではアレンジに応じてもらえる場合があるので、興味がある方は相談をしてみてください。
国境離島にある戦争遺跡
駐車場からゲートを越えて比較的すぐ、崖付近の牧草地に一部分だけ不自然に並べられた岩があります。こちらは「監視所跡」と呼ばれ、かつて第二次世界大戦中に旧日本軍が日本海を航行する敵船を監視するために作られた半地下式の監視所の跡です。今は分かりやすい状態に見えますが、当時は芝を張ってカモフラージュされていたそうです。このような戦跡を見ると、西ノ島の国境離島という立地を感じさせられます。
焼火山と摩天崖
西ノ島には島内最高峰の標高451mを誇る島前カルデラの中心となる焼火山(たくひさん)と、2番目の標高434mの高崎山があります。一般的に考えると標高が高い方が寒い印象がありますが、焼火山は摩天崖によって日本海から吹く強い風から守られているため、標高の低い高崎山にだけ寒い地域で生息する植物が生えているそうです。同じ島の中でも動植物の生体系に多様性があり、その一部に摩天崖が関わっていると思うとより偉大さを感じさせられます。
摩天崖を訪れるおすすめの季節
霧の濃い摩天崖も幻想的ですが、やはり青空と断崖絶壁を眺めたいという方も多いのではないでしょうか。天候次第なので一概に言うことはできませんが、晴れた摩天崖の絶景を見たいのであれば春~秋、特に梅雨明けがおすすめです。ただし、駐車場にも売店や自動販売機などはないので、夏に訪れる際は日差し対策や水分補給の飲み物などを事前に準備をしておきましょう。また、9月末は晴れた日が続いて風の強い日が少なく過ごしやすい気候のようで、逆に冬は風の強い日が多いそうです。その他の観光も考慮しつつ、旅程を立ててみてはいかがでしょうか。
摩天崖への行き方と注意点
船が着く別府港(べっぷこう)から摩天崖までは、車で約25分で行くことができます。駐車場までの道のりに比較的細い道があったり、馬や牛がいたりするので安全運転で訪れてください。
また、駐車場から展望所に行く際、ゲートが閉じられていますが自由に出入りすることができます。こちらのゲートは動物が逃げてしまわないためにあるので、通った後はゲートを閉じることを忘れないようにしましょう。駐車場近くにはトイレがありますが、できれば他の場所で済ませて行くのがおすすめです。駐車場から崖の先端付近の展望所までは徒歩5分~10分ほどですが、そちらまでの道のりも十分にダイナミックな景色を楽しむことができますよ。
別府港~摩天崖駐車場…車で約25分
摩天崖駐車場~摩天崖展望所…徒歩約5分
西ノ島町拠点施設と観光協会
別府港第2ターミナルの2階には、大地の成り立ちや生態系、人々の暮らしの繋がりなど隠岐ユネスコ世界ジオパークに関連した西ノ島や隠岐諸島の様々な情報が分かりやすくまとめられて展示されている「西ノ島町拠点施設」が併設されています。実際に見た景色の背景が分かると、より興味が深まるのではないかと思います。船の待ち時間などで、ぜひ気軽に立ち寄ってみてください。また、1階には西ノ島町観光協会があり、焼火神社や由良比女神社などの御朱印をこちらでいただくことができます。
最後に
隠岐諸島・西ノ島の代表的な景勝地「摩天崖」についてご紹介しました。晴れている日の摩天崖はもちろん良いけれど、霧の日にしか見られない景色もありますよ~!と、いきいきと話されるガイドさんの姿がとても印象的でした。写真ではなかなか見ることがない霧の中の摩天崖を楽しむことができました。もし訪れた日が晴れていなくても諦めるのではなく、ぜひ摩天崖まで1度訪れてみてはいかがでしょうか。