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鹿児島

【大島紬村】奄美大島の伝統的工芸品“本場大島紬”の製造工程を見学

2022.06.15

【大島紬村】奄美大島の伝統的工芸品“本場大島紬”の製造工程を見学

奄美空港から車で約20分に位置する「大島紬村」では、奄美大島の伝統工芸品“本場大島紬”を職人の方が手織りをする姿などの製造工程を実際に間近で見学できたり、亜熱帯植物を見たりすることができる大島紬の生産工場観光庭園です。また、大島紬から仕立てられた着物のギャラリーや大島紬やその他のお土産を購入できる売店などもあります。今回は大島紬とはどのようなものなのか実際に学んだ情報と合わせて、泥染め体験や大島紬の製造工程を学ぶことができ、雨でも楽しめる観光スポット「大島紬村」の見どころや行き方についてご紹介します。

#鹿児島県 離島 #奄美群島 #奄美大島 観光 #観光スポット
撮影:りとふる編集部



“本場大島紬”とは

奄美大島_大島紬②_210610
鹿児島県と沖縄本島のちょうど中央辺りに位置する鹿児島県の離島「奄美大島(あまみおおしま)」。亜熱帯海洋性気候と呼ばれる気候で、まるでジャングルかのような木々が茂る森やマングローブ林などの緑も、美しいエメラルドブルーの海も楽しめる離島です。

奄美大島をはじめとする奄美群島や鹿児島県・宮崎県などで製造されている「大島紬(おおしまつむぎ)」。その名の通り奄美大島伝統の織物で、歴史の発端は7世紀頃まで遡るとも言われていますが詳細は分からないそうです。

いくつかの条件をクリアした物だけが、“本場大島紬”と名乗ることができます。織り糸となる白い絹糸を染め上げて色を入れる“先染め”をした後に、複数の工程を経て最後は手織りの平織りで絣合わせをして仕上げられます。数十回染めた絹糸を泥田でさらに揉みこんで染める「泥染め」の工程は、大島紬の中でも特徴的な工程の1つです。大島紬といえば黒っぽいものや黒地に茶色がかった模様が織られてるもの、濃い藍色などのイメージが強いですが、染め方によっては白色や最近では色味を付けたものまで様々です。

 

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大島紬はその工程の多さから“世界三大織物”と称され、高級品として扱われています。大島紬で仕立てられた着物は高額になりますが、何度も揉み込まれた糸で作られることから生地が軽くしなやかで、しわにもなりにくく、親子3世代で繰り返し着用できるほど丈夫な生地だとも言われています。近年では着物に限らず、お世話になった方への贈答品として大島紬を使った小物を送る方もいるそうですよ。

伝統工芸品の中でも、100年以上前から続く伝統的な技術や技法で作られているかなどの様々な条件の下、経済産業大臣の指定を受けた工芸品が国指定の伝統的工芸品として認められます。奄美大島の大島紬は“本場大島紬”として指定され、2022年6月現在、全国の237品目が指定されています。(参照:経済産業省公式HPより)

職人の技術を見学できる「大島紬村」

奄美大島_大島紬村③_220615

奄美空港から車で約20分、龍郷町にある「大島紬村」では、奄美大島の伝統工芸品である“本場大島紬”が糸から織物になるまで、どのように作られていくのか工程を学びながら実際に職人の方が手織りをする姿を間近で見学できる大島紬の生産工場観光庭園です。亜熱帯植物が茂る庭園の中に位置するため、ガイドの方に製造工程を教えてもらいながら、奄美大島で見られる植物や自然などについてのお話も伺うことができました。

奄美大島_大島紬村④_220615

入口から敷地内に入ると、すぐに亜熱帯植物が目に入ります。大島紬村は生産工場観光庭園というだけあって、庭園の中に染色工房や加工場、ギャラリー兼売店などの施設が点在し、庭園内をぐるっと周りながら亜熱帯植物も見ることができました。

奄美大島の自然を活かした染織工房と泥染め

奄美大島_大島紬村・テーチ木_220615

まずは、染織工房で大島紬を織るための糸について説明を聞きます。奄美大島ではテーチ木と呼ばれている車輪梅(しゃりんばい)の木を原料とした染料で絹糸を染めていきます。なんと20回も繰り返し染めるそうです。

奄美大島_大島紬村・染織工房_220615

吊り下げられているカゴのようなものに入っているのが、テーチ木を砕いてチップ状にしたものです。これを煮だして染料を作るところから始まるそうです。20回染めると、次は奄美大島ならではの泥田で、テーチ木染をした絹糸を揉みこんで染めていきます。

奄美大島_大島紬村・泥田_220615

この泥のプールのような泥田で泥染めをします。泥田の鉄分とテーチ木に含まれるタンニンによって化学反応して色が染まっていくそうです。泥田ではたくさんの糸を染めていく中、徐々に鉄分が減少してくると色の反応が悪くなるため、別の泥田に移動して泥染めをします。この鉄分が減少した泥田は、周りに生えているソテツの木の影響で少しずつ鉄分が補給されていくので、いずれ泥染めができるようになるそうです。まさに自然の恵みをうまく活用した伝統と知識の染物なのだと感じました。なぜ伝統工芸品の工場と亜熱帯植物園が併設しているのか疑問でしたが、それも納得できますね。

職人の技を見学!大島紬加工場

奄美大島_大島紬村・加工場_220615

次は加工場に移動して、実際に作業をしている姿を見学しました。大島紬では、まず織物のデザインをして設計図を作り、そのデザインを基に締機(しめばた)という技術で仕上がりのデザインに合わせて糸の染める部分、染めない部分を分けていきます。なんと、デザインに合わせて糸1本1本に色の付け方を変えているそうです。果てしない工程を経て、やっと織り糸が完成します。この技術は想像以上で、伝統工芸にはあまり興味がない方でも実際に見ながら説明を受けると驚くこと間違いなしです。

奄美大島_大島紬村(大島紬観光庭園)_211223

このような数多くの工程を経て、やっと染め上がった糸を織り上げていきます。経糸と横糸(緯糸)の1本ずつに織る場所が決まっているため、最初にデザインをした指示書に合わせて糸を並べ直してから織り始めます。その日の気候によって糸の張り方が変わるようで、柄が微妙にずれてしまうのを1か所ずつ指や針を使って細かく手直しをしながら織り上げていくため、なんと、1日8時間作業をしても30cmほどしか織ることができないそうです。想像以上の技術と気合いと根気が織り成す技に圧巻でした。

インターネットで下調べをしていましたが、実際に機織りの音を聴きながら見ると、やはり全く印象が違います。とても繊細で手間をかけた工程だと実感し、また職人の奄美大島の方言や優しい雰囲気にも癒されました。

 

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見学の後は、大島紬展示販売サロンで大島紬の着物や小物を見ることができます。この工程を知ると知らぬでは、きっと全く違うものに見えると思いますよ。これだけ多くの方々の手間と技術がかけられていると、高額だと思っていた品物たちも納得ができました。

奄美大島の文化について

奄美大島_大島紬村②_220615

大島紬村は亜熱帯植物庭園の中に製造工程を学べる施設があるので、園内を巡りながらガイドの方とお話しする時間も楽しかったですよ。植物のことや気候、島の中でも地域によって言葉に違いがあることなど、奄美大島在住の方からお話を伺えるのはとても貴重な時間となりました。

奄美大島_大島紬村・美ら門_220615

例えば、駐車場から園内に入る際にくぐった門は、美ら門(きょらもん)と呼ばれるそうです。ちなみに沖縄では美ら海(ちゅら)と言って、美しいという意味があります。他にも言葉のイントネーションなど、食文化や気候だけでなく言葉も沖縄や薩摩の文化の影響を受けていることを感じることができました。



世界三大織物と称される理由とは

奄美大島_大島紬_220611
このように工程の多い大島紬は、生地が完成するまでに半年から1年ほどかかるそうです。数々の工程を経て完成する大島紬は美しい図柄や泥染めならではの艶のある黒色、しなやかで着心地が良い軽い生地でありながらも親子3世代で受け継ぐことができると言われるほど生地が丈夫なのも特徴の1つです。職人の方々の細かな技術が紡がれた大島紬は、日本だけでなく世界でも愛されて世界三大織物と称されています。

大島紬村への行き方

【車の場合】
奄美空港から県道82号 竜郷奄美空港線を南西に進み、その後国道58号に向かいます。左側にある「奄美大島紬村」の看板を目印に左折して少し直進すると駐車場が現れます。
奄美空港⇔大島紬村…車で約20分

【バスの場合】
最寄りのバス停が設置されているので、バスでも訪れやすい観光スポットです。大島紬村までの道のりにも南の島らしい植物が生えているので楽しめるのではないでしょうか。
バス停「大島紬村入口(加世間)」⇔大島紬村…徒歩約5分

奄美大島への行き方

奄美大島へ渡るには飛行機か船を利用します。飛行機の場合は、奄美群島以外からも東京・大阪・福岡・鹿児島・沖縄などの国内7つの空港からLCCを含む直行便が就航しています。また、フェリーの場合は沖縄と鹿児島を結ぶフェリーが奄美大島を経由しています。詳しい行き方はこちらをご覧ください。

 

最後に

職人の方々の細かな技術が紡がれた大島紬の製造工程を見学できる「大島紬村」についてご紹介しました。こちらでは着物だけでなく、手頃な価格で大島紬のコースターやがま口財布、シュシュなども販売しています。奄美大島の旅の記念や、大切な方へのお土産に良いのではないでしょうか。たった20分ほどの見学でこんなにも深く学べて、より奄美大島の自然や文化に興味を惹かれる内容なので、伝統工芸などに興味がない方でも、ぜひ訪れてほしいスポットです。

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