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アジア

SDGs先進島のタイ・タオ島で根付くサステナブルな取り組み

2022.06.21

SDGs先進島のタイ・タオ島で根付くサステナブルな取り組み

皆さんはタイ南部のタイランド湾に浮かぶタオ島をご存知でしょうか。リゾートアイランドとして人気があるサムイ島から、さらに船で2時間ほどのスキューバダイビングが有名な島です。タオ島は小さな島ですが、世界中から美しい海を求めて観光客が訪れています。
そんなタオ島で今年初めて開催された「World Oceans Day 2022 “Spot Light”」に、りとふる編集部も参加してきました。オーガナイザーのラムルック・アッサバシンさんへのインタビューと合わせて、タオ島のサスティナブルな取り組みをご紹介します。

#タイ 離島 #タオ島 イベント #タオ島 SDGs
取材:りとふる編集部

「World Oceans Day 2022 “Spot Light”」とは?

2022年6月7日と8日にタオ島で開催されたイベント『Spot Light』は、タオ島が今まで自発的に取り組んできた環境保全活動をワークショップとして観光客も体験できるというイベントです。
このイベントを通して、島の美しさを守るためにタオ島の環境保全活動を紹介し、今までの取り組みを島外の観光客に理解をしてもらい、次世代を担う島民にも伝えることが目的です。

『Spot Light』の体験メニュー
  • サンゴ礁のリハビリテーションケア
  • サンゴ礁のモニタリング
  • ブイのメンテナンス
  • 水中クリーンアップおよびビーチクリーンアップ
  • 地元の漁師とのFish Aggregation
  • 地域森林のリハビリテーション
  • タイダイ染のワークショップ
  • シーグラスを使ったワークショップ
  • ナチュラルクリーニング製品のワークショップ
  • ゼロウェイストのタイ料理

数ある体験メニューの中から今回、りとふる編集部では3つのワークショップを実際に体験しました。

地元の漁師とのFish Aggregation(魚を集める)

タオ島_SPOTLIGHT_漁師②

タオ島の漁師たち

タオ島の漁師たちは釣りで生計を立てていますが、魚を獲るだけではタオ島の海から魚が減ってしまいます。ダイビングの聖地として人気のあるタオ島の海から魚が減少すれば、ダイビングの魅力が失われてしまう懸念もあります。
そこで地元の漁師たちは、魚を保護する活動も同時に行いながら釣りをしています。

タオ島_SPOTLIGHT_漁師①

ココナッツの葉で装置を作る様子

タオ島_SPOTLIGHT_漁師③

装置を海に設置する様子

竹にココナッツの葉を結び、重りを付けて海に沈めた装置は海藻のような役割を果たし、装置の周りは魚が棲みやすい環境となります。そこには自然と魚が集まり、たくさんの魚がタオ島周辺の海域で育ちます。
この装置を一定以上の間隔を空けて複数設置することで、1つの場所に魚が集まり過ぎず、またダイビングスポットと漁のスポットを分散させることができます。
地元の漁師たちの生計と観光客のダイビングの双方のニーズを満たすためには、漁と保護のバランスが必要なのです。このように、タオ島では地元の漁師たちが持続可能な漁をするための技術を生み出しています。

タイダイ染のワークショップ

タオ島_SPOTLIGHT_タイダイ①

染料となるココナッツの皮

タオ島_SPOTLIGHT_タイダイ③

衣類などを染める作業

観光客にも人気のココナッツですが、タオ島では大事な天然資源です。皮もそのまま廃棄せず、タイダイ染の染料として利用することで、廃棄ゼロに取り組んでいます。
ココナッツの皮を水で煮出し、その染料に漬けることで、Tシャツやストールなど様々なタイダイ染商品を作ることができます。

タオ島_SPOTLIGHT_タイダイ②

タイダイ染の模様作り

タオ島_SPOTLIGHT_タイダイ④

出した後の皮は植物の乾燥を防ぐために利用

タイダイ染めとは、Tie(縛る)Dye(染める)という意味で、縛り方によって様々な模様になります。このように、天然由来の着色剤を使用して、ユニークな作品を生み出しています。
染料を抜いた後の皮は暑いタオ島で植物の乾燥を防ぐために利用することで、廃棄物ゼロを目指しています。

ナチュラルクリーニング製品のワークショップ

タオ島_SPOTLIGHT_エコ石鹸②

珈琲の出がらしから石鹸を作る様子

年間を通して多くの観光客が訪れるタオ島には、飲食店やホテルがたくさんあります。
少しでも廃棄を減らすために島内の飲食店やホテルでは、珈琲の出がらしやフルーツの皮から石鹸やボディーソープなどの製品を生産しています。

タオ島_SPOTLIGHT_エコ石鹸①

商品化された石鹸やボディーソープ

カラフルな包装紙で包まれたタオ島オリジナルの石鹸やボディーソープは、島内のコンビニや雑貨店でも販売され、お土産としても人気の商品となっています。
通常では廃棄されるものも貴重な資源として最大限に活用することで、無駄を排除したエコロジー商品として生まれ変わります。

「World Oceans Day 2022 “Spot Light”」ナイトマーケット

タオ島_SPOTLIGHT_ディナービュッフェ

ディナーブッフェの様子

タオ島_SPOTLIGHT_会場

イベントに合わせて、島のメインビーチ(Sai Ri Beach)では、ディナーブッフェを楽しむことができました。テーブルは木製、椅子は藁で作られていて、すべてが自然のもので設営されています。食べ物の残りは地元のコミュニティに寄付されたり、地元の農場や農学プロジェクトの堆肥として使用されたりと、無駄にならないように料理が提供されています。

タオ島_SPOTLIGHT_会場②

このイベントは観光客だけではなく、島の子どもからお年寄りまで参加しています。ステージではダンスや生演奏などもあり大盛り上がりでした。
また、ナイトマーケットのコーナーではDJブースやオブジェも設置され、イベントに参加した観光客で賑わいます。

主催者のラムルック・アッサバシンさんへインタビュー

タオ島の取り組みを理解してもらい、未来の豊かな自然を守る

タオ島_SPOTLIGHT_主催者

Rumluek Assavachin(ラムルック・アッサバシン)さん

「World Oceans Day 2022 “Spot Light”」は今年初めて開催しました。
ただ、これからは毎年開催し、タオ島の取り組みを紹介する場を作ることができればと思っています。
タオ島は20年ほど前からダイビングで人気の観光地となり、15年ほど前から島民が主体で環境保全の取り組みを行うようになりました。
なぜ、ここまで島民にサステナブルの意識が浸透したのかというと、観光客が求めているものは、タオ島の美しい海や魚などの自然環境であり、その自然を守ることで観光客から選ばれ、島の経済を豊かにするということを島民たちが最も理解をしているからです。

タオ島_SPOTLIGHT_スタッフ

運営スタッフ

今回のイベントも、すべてが島民たちのボランティアで運営しています。島のレストランやホテルで働く方たちが、イベントの体験メニューからナイトマーケットの食事の提供まで、すべてを自分たちで行っています。
こういった取り組みは、情報をシェアすることでお互いが環境保全について考える機会が増えると良いと思っています。

—タオ島で、毎年ダイビングができるのはなぜ?

その答えは、自然環境を守ることです。昔からタオ島では環境を守るために様々な取り組みをしていましたが、その努力姿勢を見せてはいませんでした。これからは、どうやって環境を守る活動をしているのかも発信したいと考えています。
タオ島はダイビングスポットであるとともに、サステナブルな取り組みもしているということを今回のイベントを通して皆さんにも知ってほしいと思います。

環境保全の活動を理解してほしい

タオ島にはゴミ処理施設がありません。そのため廃棄物はスラ―タニ―県の本土に輸送するか、島内でリサイクルをするしか方法はありません。スラ―タニ―県に輸送するとなるとコストがかかるため、島内のゴミを可能な限り日常生活で使えるものにリサイクルする取り組みをしています。
また、タオ島のコンビニではストローやビニール袋も提供していません。タオ島内でプラスチックを見ることもあると思いますが、そのほとんどがリサイクルされたものです。タオ島ではプラスチックゼロを心掛けているので、観光客にも理解してほしい。そして、ゴミの分別に協力してほしいと思っています。
それらの1つ1つの努力で、タオ島が美しい島であり続けることができるのです。

次世代にも受け継がれるサステナブル

タオ島では15年以上前から、地元の子どもたちにも学校で環境保全の取り組みを見せる活動をしています。島内の学校ではこのような教育が評価され、昨年からタイ政府に認定を受けています。
このイベントが継続されることで、世界に伝え、次世代にも伝え、タオ島の未来が守られることを望んでいます。

取材後記

タオ島_海

いかがでしたか?今回、りとふる編集部は「World Oceans Day 2022 “Spot Light”」に参加したことで、島民たちの日常の努力や生産過程を知り、その目的や思いまで体験することができました。
日本国内でもサステナブルな取り組みはたくさんあります。このような、観光で訪れるだけでは見ることができないストーリーを1つの地域が一丸となって発信することは、日本においても重要なことではないでしょうか。
大盛況に終わった今回のイベントが来年以降も開催され、このような取り組みを理解した日本人観光客がたくさん訪れることを願っています。

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