鹿児島
【鹿児島県・屋久島 移住者インタビュー】世界自然遺産の中で暮らす、屋久島のリアルな島暮らし
伊丹空港や福岡空港、鹿児島空港から飛行機の直行便もあり、鹿児島市内から高速船で最短約1時間50分の屋久島。アニメのモデルにもなった幻想的な白谷雲水峡、樹齢2000年~7200年といわれる縄文杉など、自然が織り成す圧巻の美しさや日常を忘れて気持ちをリフレッシュできるアウトドアなどのアクティビティも充実しています。
今回は屋久島に移住した木全 香里(きまた かほり)さんにお話を伺いました。
移住前から変わらない「やってみよう」の精神
私は、生まれも育ちも大阪で、屋久島に移住して15年が経ちました。大阪で働いていた頃はあまりに忙しくて精神的に疲れてしまい、ついには電車に乗るのも辛くなって仕事を辞めざるを得なくなりました。
気持ちを切り替えるために、奥飛騨の旅館で働いてみると、自然に近い場所が自分に合うのだとわかりました。それからは、自分探しの旅ではないですが、リゾートバイトをいくつも経験し、兵庫や長野、海外だとアメリカにも行きました。
とにかく何事も挑戦してみるタイプで、常に『やってみよう』『これまでも何とかやってきたし、今回も大丈夫』という気持ちで行動しています。
屋久島と出会ったきっかけ
屋久島を知ったのは、2009年の皆既日食がきっかけです。夫と一緒に初めて屋久島を訪れ、自然が豊かだなと感じました。その後も何度も訪れるようになり、1か月以上の長期滞在も経験してみました。
移住先として四国なども検討しましたが、皆既日食を初めて見た屋久島に惹かれ、最終的に屋久島を選びました。移住することを友人たちに伝えても「あ、そうだよね」という感じの反応で、とくに驚かれなかったです。これまでの経歴のとおり、移動や新しい環境に飛び込むことへの抵抗があまりないようですね。
移住の準備らしい準備は、それほどしていませんでした。妊娠中だったため、自分ではあまり動けませんでしたが、夫が何度も現地を訪れて住まいや情報収集をしてくれました。直接話を聞いて、島の人たちと交流を深めてくれたおかげで、夫だけでなく家族ぐるみで島の人たちと関わるようになって、空き家も地域の人に紹介してもらいました。島には不動産屋もありますが、私たちは利用しなかったです。
島暮らしのはじまり。そして両親も移住へ
最初は島の北部にある一湊(いっそう)という地域に住んでいました。その頃働いていたのはエッセンシャルオイルのマッサージ店で、飲食店で働いていた時期もありましたが、ガイドの仕事をする夫の職場のことを考えると、どうしても不便になってしまい、思い切って、東部にある安房という地域に引っ越しました。こちらも、島の人に教えてもらった物件に住むことに決めました。ただ、借りた当時はとても古く、強い風が吹くと屋根がめくれるほどの状態でした。
私たちの屋久島での暮らしぶりを見ていたからでしょうか。今では両親も屋久島に移住しています。親や兄弟が後から移住してくるというのはよく聞く話ですね。
SNSの反響が起業のきっかけに
今は個人でケーキの販売をおこなっていますが、これまでケーキ作りに携わっていたわけではありません。最初は趣味で作ったケーキをSNSに投稿していました。すると、驚くほど多くの反響があり、それがきっかけで店舗を持つことを考え、現在に至ります。もともと起業を目的に移住したわけではなく、移住当初はマッサージ店や飲食店で働いていましたし、起業したのは移住してすぐではなく、下の子どもが1歳になる前のことです。現在は、自宅の敷地内に店舗を構え、今年で6年になります。
自然の中で育つ子どもたち

島を一周するにはおよそ3時間くらいかかります。大きな集落は安房や宮之浦くらいですが、同じ屋久島でも一周すると北と南でまったく天候が違うことに気づき、驚きました。一湊に住んでいた時に安房近くの公園へドライブすると「ああ~晴れてる!」とはしゃいだものです。
子どもたちも、都会ではなかなかできない貴重な体験をしています。川や海がとても近いので、休日は田植えやサップ、カヤックなどもしますが、都会ならお金を払わないとできない経験です。田づくりで泥んこになりながら田植えをする子どもたちをSNSに投稿すると「羨ましい!」とコメントをもらうこともよくあります。自然の中で育った子どもたちは、今後どのような大人に育っていくのでしょう。今から楽しみで仕方がありません。
私自身のリフレッシュの時間も確保しています。月に1回は親しい友人と集まってお菓子づくりや、ご飯を持ち寄ってランチ会をしています。バトミントンは週2回、スケートボードにも積極的に参加しています。体をたくさん動かすと元気になるので、できる限り予定を入れるように工夫して楽しんでいます。両親がこちらにいるので、島を出る用事といえば子どものイベントくらいです。買い物もインターネットでできてしまうので、あまり本土には行かないかもしれませんね。
自然溢れる島での現実
屋久島の雨の降り方はとても極端です。北部では降っていても、南部では降っていないこともあります。想像以上に虫が多いのも、住み始めてから気づいたことでした。甘いものをテーブルに置いていると、アリがすぐに寄ってきます。最初は殺虫スプレーで追い払っていましたが、自然の中で暮らさせてもらっているという気持ちから、今では共存を受け入れるようになりました。
また、医療面が充実しているとは言い難いですね。眼科や皮膚科の専門医は屋久島には常駐していないので、診察を受けるには本土に行かなければなりません。歯科医院は島にありますが、予約しようとすると2か月待ちの現状。そのため、何かあった時は大変かもしれません。
私の住んでいる安房の人口は屋久島の中でも多く、移住者も多いようですが、島全体の人口は減少傾向にあると聞きます。
人と人との心の繋がり
屋久島は魅力溢れる島です。川や海が近いので、五感で自然を感じられ、子どもを育てるにものびのびとした暮らしを送ることができます。そして、人との繋がりを強く感じられます。仕事や子どものことで困ったときにすぐに助けてもらった経験が何度もあります。例えば、まだ子どもが幼い頃、泣いていたら近所の人がすぐにおやつや食事を持ってきてくれました。都会だと隣人の名前も顔も知らないこともあり、マンション住まいでは静かに暮らすことを気にかけなければなりません。この島では、地域全体で子どもたちを見守っていく温かさを感じています。
お店を営業していると、お客さんはどこかで繋がりがある方が多いです。オーダーメイドのケーキでは人の繋がりが強みにもなります。ストーリーや背景を大事にしながら、一つひとつ丁寧にケーキを作っているので、もらう人のイメージがわかって表現がしやすいです。それで喜んでもらえるのだから、これほどうれしいことはないですよね。
移住に興味があれば、実際に来て確かめるのが良いと思います。島は決して便利だとはいえません。不便だからこそ、便利さだけではない豊かさ、大切なものが見えてくると思っています。自分に合うのかどうかは肌で直接感じて確かめることが大切です。屋久島の自然や雰囲気を体感してみて、合うと思ったら思い切って移住をする。興味がある人は、屋久島を訪れてみてはいかがでしょうか。
※本記事は鹿児島県熊毛支庁総務企画課総務労政係の令和8年度熊毛地域人材確保PR事業により作成しております。





